あてもなくネットサーフィンをしていた時のこと。
突然、一冊の本のことが頭に浮かんだ。
あの本は今でも読むことができるのかしら?
『1980 アイコ 十六歳』。
四十年以上も前に出版された本である。
当時、高校生だった著者、堀田あけみが書いた小説だ。
彼女はこの小説で、十七歳にして文藝賞を受賞した。
新聞の広告欄でこの本を知った時、私は中学3年だった。
中学1年で出会った小説『野菊の墓』に衝撃を受けて以来、
近代文学にどっぷりとはまっていた頃だ。
すっかり文学少女の気分でいた私は、
いつか自分も小説を書いてみたい、という野心を抱いていた。
そんな時に目にした『1980 アイコ 十六歳』。
自分と大して歳も違わぬ女子高生が書いた本に
興味を持たないわけがない。
しかも、当時の最年少で文藝賞まで獲ったのだ。
今はもうない本屋の一角に、あの本が平積みされていた情景を
ありありと思い出すことができる。
確か、亡き父と一緒に買いに行ったのだった。
本を手にとり、わくわくしながら開いた時の気持ちが蘇る。
物語は、名古屋を舞台にした、高校生アイコの日常を描いたものだ。
詳細ははっきりと覚えていないが、読後に思ったことは
「自分にも書けそう」、だった。
高校に入ると、私は早速、文芸部に入部した。
そして、書いた短編が『精神病棟』。ものすごく陰気な内容だった。
部の先輩が書いた短編と比べて、自分の才能の無さにひどく落ち込んだ。
それ以来、全く書いていない。
出版された当時の『1980 アイコ 16歳』は
フリマで入手できるようだ。
著者は現在、大学教授をしていると知った。
近影には高校生の頃の面影が残り、
まるで昔の知り合いに会ったような気持ちになった。